HOME相撲漫画@(岡本一平作)
 国技館寫意 四日目
土俵にて勝負酣なる最中館内へ
鳶が一匹入って来て天井へ止まった。
見物席の憲政会総裁加藤子爵と前々海相八代大将とが
他の観客同様締まりを忘れて仰向いてる、
この辺になると余り人と賢愚の差別は無いようだ。

 国技館寫意 五日目
小牛田山が前額の真ん中に相撲膏を貼り登場、
仕切ってやつと突っかける、
膏薬は相手力士逆鉾の頭へ貼りつく、
逆鉾待ったをして膏薬を剥がし元の持ち主へ返した。
「後日の為めだ受け取りを貰って置こうか」
まさかそんなことも云わぬが。

 国技館寫意 六日目
大潮が栃木山に対する仕切り方が妙だ。苦心を重ねて行くに従い段々斜めに身体を持って行く、
仕舞いに四本柱関ノ戸の前へ尻を持って行って仕舞った、この儘で立会へば大潮は栃木の横っ腹へ喰いつく事になる。栃木山も立ちにくがり固くなったり怒った顔をしたり苦笑したり、首を捻ったりお陰で横綱の百面相が拝めた。
待った二十五分にして、立ち会えば何の事勝負は
たった二秒五分の四で片がついて仕舞った。

 国技館寫意 七日目
前の桟敷に芸者を連れて来てる客、
後桟敷に芸者を連れて来てる客を横目で睨み乍
「今度の不景気であいつの身代もう吹っ飛んで居る筈なのに痩せ我慢してあんな見栄を張ってやがる」後桟敷の客、前桟敷の客を憫笑し乍ら
「あいつも芸者でも連れて来て空景気を張ってなきゃいつ取付けに遭うかもしれなかろう
いわば芸者は信用維持の為の保護色さ」

 国技館寫意 八日目
大潮大錦、立上がるや
右四つ大潮が下手投げを見せる刹那に
大錦の例の太鼓腹がブーンと唸った。
コレコレその辺を探して見て呉れ
大潮が落ちては居ないか。

 国技館寫意 九日目
三杉磯に捻り気味に突き倒され
大錦の太鼓腹が土俵に弾んだ。
臍に国技館の天井を見物させた。
バウンドして行司溜へ落っこった。
それから苦笑し乍土俵へ這い上がった。
這い上がりという手は
四十八手にない横綱発明の新手だ。

 国技館寫意 十日目
東方阿蘇ヶ嶽が成績優良とあって
優勝旗の旗手に選ばれた、相変わらず難しい顔付をしている。
優勝旗を貰ってそんなに迷惑かね。

 相撲漫詩 @
福柳に勝った白岩が水をつけて居る前へ廻り
洋服姿のひいき一人肩を叩いて
褒めあげたり尻へ廻って拝みけるかも

 相撲漫詩 A
両国に負けた鞍ヶ嶽
左四つ故砂のつかぬ筈の手を仕切に打ち払い
ついた腹の砂をそのままに放って引き上げるかも

 相撲漫詩 B
徳川議長さんが連れて来た孫さんにやさしく
優勝額の説明をしてやってる。見物の云う事にゃ
「人情に変わりはないとみえるテ」

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